労務管理
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労働基準法、安全衛生法、個人情報保護法、高年齢雇用安定法、雇用機会均等法、パートタイム・有期雇用労働者法、育児介護休業法など採用から退職までの人事雇用管理を法や通達等をもとに解説しております。

募集・採用

性別や年齢によって異なる募集•採用条件を設けるとき

均等法は、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めています(雇均5)。これについて、厚生労働省の指針においては、「募集又は採用に当たっての条件を男女で異なるものとすること」を均等法に違反する措置として定めています(労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平18-10-11厚労

告614))。したがって、性別により異なる募集・採用条件を設けることは、原則として禁止されます。

ただし、一定の場合に女性労働者を有利に取り扱うポジティブアクションや、防犯上の要請等合理的理由のある場合において必要な限度で性別により異なる取扱いを行うことは可能です(前掲指針)。ポジティブアクションの例として、例えば、いわゆる総合職の女性が相当程度少ない場合に、総合職の採用に当たって、女性を積極的に選考すること等女性優遇の措置をとることが挙げられます(コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針(平25,12 - 24厚労告384))。なお、いわゆるコース別雇用管理においては、コースごとに異なる雇用管理を行う

ものであって、性別によって雇用管理を行うものでないにもかかわらず、例えば、職場における固定的な性別役割分担意識等を背景に実質的に性別による雇用管理となっている等、その運用において男女で異なる取扱いがなされているような場合は、原則として均等法違反となります。例えば、「転勤があることが条件となっているコース等に応募した者のうち、女性に対してのみ、面接等において転勤の意思を確認すること」は、均等法に違反すると考えられます(コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針の策定について(平25、12 ・ 24雇児発1224第さらに、性別以外の事由に基づき異なる募集■採用条件を設ける場合であっても、それが実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、原則として禁止されます。均等法は、間接差別(=性別以外の事由を要件とする措置であって、他の性の構成員と比較して一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものとして厚生労働省令で定める措置(以下に掲げるもの)

①募集•採用に当たり、身長、体重又は体力に関する事由を要件とすること

②募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に当たり、転居を伴う配置転換に応じることができることを要件とすること

③昇進に当たって、転勤の経験があることを要件とすること

ただし、業務の性質に照らして当該措置が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他合理的な理由がある場合にはこの限りではありません。

なお、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年9月4日法律64号)が成立•公布され、301人以上の労働者を雇用する事業主は、以下の事項が義務づけられることとなりました。

①採用者に占める女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率等について、_社の女性の活躍状況を把握し、課題分析を行うこと

②前記(Dの結果を踏まえて、女性の活躍推進に向けた行動計画を策定し、都道府県労働局(雇用均等室)へ届け出るとともに、行動計画について労働者への周知、外部への公表を行うこと(なお、行動計画には、計画期間、数値目標、取組内容、取組の実施時期を盛り込むこと)

③自社の女性の活躍に関する情報を公表すること

また、行動計画の策定•届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な企業は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。

原則として、労働者の募集•採用に当たって年齡制齒を設けることはできません

募集•採用に当たって年齢制限を設けることは、以下の場合を除いて禁止されます

(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律9.労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則1の3①)。

①定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集•採用する場合

②労基法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合

③ 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集•採用する場合

④ 技能•ノウハウ等の継承の観点から、募集・採用の対象を特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かっ、期間の定めのない労働契約の締結を目的として募集・採用する場合

⑤ 芸術•芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合

⑥ 高年齢者の雇用の促進を目的として60歳以上の高年齢者を募集•採用する場合、又は特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限ります。)の対象となる者に限定して募集•採用する場合

なお、募集に際しては、職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度など、応募者に求められる事項をできる限り明示することが求められています(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則1の3②)。

労働基準法上の労働者

法9条の「労働者」かどうかの判断は、雇用契約、請負契約といった契約の形式にかかわらず、実態において事業に「使用され」賃金を支払われていると認められるかどうかによります。「使用され」ているかどうかは、仕事の依頼等に対する諾否の自由があるか、業務の内容や遂行方法について指揮監督の有無、勤務場所や時間の拘束の有無、仕事を他の者に代替させることが認められるか否か等から総合的に判断されます。

労働基準法上の使用者

法第10条

この法律(労働基準法)で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他事業の労働者に関する事項について、事業主のために好意をするすべての者をいう。

 

法における「使用者」とは、法の定める義務の主体(履行の責任者)として捉えられます。法10条の「労働者に関する事項」には、人事、給与、福利厚生その他の労働条件の決定、労働者に対する業務命令、指揮監督、労務管理等広く含まれますので、これらの事項について事業主のために一定の権限を持って行為する者は、企業内における地位の高いものから比較的地位の低い者までその権限と責任に応じてすべて「使用者」に該当することとなりますが、単なる上司の伝達者はこれに該当しません。

事業の単位

法は事業(事業所)を単位として適用されますが、一の事業に当たるかどうかは主として場所的観念によって判断されます。したがって、同一場所にあるものは原則として、一個の事業とし、場所的に分散していれば原則として別個の事業としますが、例外として、同一場所にあっても主たる部門と著しく労働の態様が異なり、従事労働者、労務管理等が明確に区分され、それと分ける方が法の適用がより適切に行えるような場所(例えば、工場内の診療所や食堂など)には、その部門を独立の一つの事業と取り扱います。逆に、場所的に分散していても出張所等で規模が著しく小さく、組織的関連ないし事務能力から見て一つの事業という程の独立性がない場合には、直近上位の気候と一括して一つの事業として取りあつかいます。