2.コンピテンシー活用法概略

■人事政策研究所が提唱するコンピテンシー・ディクショナリー

しかし自社なりのコンピテンシーをゼロから作成するには相当のコストと手間がかかります。外部の専門家を入れて大々的な面接調査をすると、コストもさることながら、完成までには最低でも1年程度の期間を要します。スピード経営が求められる中堅企業においては、これではタイミングを逸してしまいます。

 

そこで今回は、人事政策研究所が提唱する「コンピテンシー・ディクショナリー(辞書)」を紹介します。本来、コンピテンシーの作成は、それぞれの企業により戦略もニーズも異なりますから、その企業独自のコンピテンシー作りが望まれます。当社のコンピテンシー・ディクショナリーをたたき台にして、自社版のコンピテンシーを迅速に作成してください。

 

 人事政策研究所が提案するコンピテンシーとは以下の通りです。

A~Hまでの8群に分かれた75のコンピテンシーで構成されています。

資料01

 

人事政策研究所オリジナルコンピテンシー一覧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A群

 自己の成熟性に関する

 

E群

 業務遂行関する

1

冷静さ

 

 

1

専門知識/革新技術の習得

2

誠実さ

 

 

2

文章力

 

3

几帳面さ

 

 

3

計数処理力

 

4

慎重さ

 

 

4

安定運用

 

5

ストレス耐性

 

5

処理速度

 

6

徹底性

 

 

6

コスト意識

 

7

率直性

 

 

7

問題解決/トラブル処理

8

自己理解

 

 

8

計画性

 

9

思いやり

 

 

9

業務改善/品質の向上

10

ビジネスマナー

 

10

業務企画力

 

 

 

 

 

 

 

 

B群

変化行動・意志決定に関する

F群

戦略・思考に関する

1

行動志向

 

 

1

視点の広さと深さ

 

2

自律志向

 

 

2

アイデア思考

 

3

リスクテイク

 

3

論理思考

 

4

柔軟志向

 

 

4

問題把握/状況分析力

5

素直さ

 

 

5

解決策の立案

 

6

自己革新(啓発)

 

6

リスク管理

 

7

チャレンジ性

 

7

課題/コンセプトの設定

8

逆説への対処

 

8

経営資源の活用

 

9

タイムリーな決断

 

9

創意的アイデアを活かす力

10

目標達成への執着

 

10

思考持久力

 

 

 

 

 

 

 

 

C群

対人(顧客)・営業に関する

G群

 情報に関する

1

親密性/ユーモア

 

1

情報の収集

 

2

第一印象度

 

2

情報の整理

 

3

プレゼンテーション力

 

3

情報の伝達

 

4

傾聴力

 

 

4

情報の活用と共有化

 

5

条件交渉力

 

5

情報の発信

 

6

新規開拓力

 

 

 

 

7

顧客維持力

 

H群

 リーダーシップに関する

8

顧客拡大力

 

1

理念・方針の共有

 

9

人物の評価

 

2

経営への参画

 

10

人脈

 

 

3

部下・後輩の指導・育成

 

 

 

 

4

権限の委譲

 

D群

 組織・チームワークに関する

5

部下・後輩への配慮

 

1

上司・先輩との関係

 

6

コミュニケーションの充実

2

チーム精神の発揮

 

7

指揮・命令・徹底

 

3

ムードメーカー性

 

8

経営幹部との関係

 

4

マンパワーの結集

 

9

部下・後輩に対する公平さ

5

政治力

 

 

10

採用と抜擢

 

 

 

 

 

11

目標の管理および評価

 

 

 

 

12

部下・後輩との対立

 

 

 

 

 

13

システム管理力

 

 

 

 

 

14

業務管理力

 

 

 

 

 

15

後継者の育成

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■タイミングを逃がさない簡便法で作る

実際のコンピテンシー作成は、『簡便法』という手法で進めていきます。

まず、今後の自社の方向性や戦略を加味し、コンピテンシーを選択します。

(下図「ステップ1」)

続いて、選択したコンピテンシーを具体的な行動に落とし込みます。

(下図「ステップ2」)

最後に、良いものを選び、まとめあげます。そしてこれを行動基準や評価基準に活用するのです。

(下図「ステップ3」)

<『簡便法』の3ステップ方式>

ステップ1 選ぶ

まずコンピテンシーを選択します。

  ↓

ステップ2 書く

コンピテンシーをさらに具体的な行動に落とし込みます。

  ↓

ステップ3 まとめる

良いものを選びまとめあげます。

 

ご覧頂ければ分かるように、コンピテンシーを創り上げる過程で、仕事の出来る人のノウハウ・コツが集約されるわけです。さらにこれを全社員にオープンにすることによって全社の行動の質が高まります。当然結果に結びつきますから、業績向上にはうってつけのやり方と言えるわけです。

 

また評価基準に使う場合、実際に評価する人がつくるわけですから、評定者訓練にもなりその後の運用にもプラスです。また出来上がった評価基準は『行動』ですから、評価しやすいのも特徴です。評価制度導入の最大のポイントは『評価への不公平感の是正』にあります。上記3ステップ方式の『簡便法』はその解消に役立ちます。

 

 

事例カーディラー ショールームレディのコンピテンシー「親密性」

 

①行動志向

②顧客維持力

③品質の向上

④親密性

⑤問題解決

⑥業務管理力

 

 

 

      お客様の名前をすぐに覚え、話しかけるときは○○様と呼びかけている

      子供にはしゃがんで目線を合わせて声をかけ、風船やおもちゃをあげている

      お客様に書類を郵送するときは、担当者欄の空いているところに『ご来店お待ちしています』や『ご連絡お待ちしております』など一筆入れる

飲み物を伺う際には、『今日は暑いですね。何か冷たいものでもお持ちしますが~』などワンポイントトークを入れている

 

<コンピテンシー作成の目的と効果>

①全社員の行動の質を高める

②ノウハウ・コツの共有化を図れる

(③評価基準の明確化を図れる)

 

■コンピテンシー6つの活用法

 人事政策研究所では、8群75項目のコンピテンシー・ディクショナリーを使って、中堅企業に対して、下記6つの具体的な活用法を提案・推進しています。

①個人スキル測定としての活用

②組織診断としての活用

③行動基準としての活用

④評価基準としての活用

⑤採用テストとしての活用

⑥中長期教育・採用計画としての活用

 

それぞれの活用法のポイントを、以下に示します。

 

①個人スキル測定としての活用

 個人のスキル測定では、8群75項目のコンピテンシーを一つ一つ測定していきます。群ごとに記述されたコンピテンシーをそれぞれ7段階で測定し、フィードバック表に、どの群が強いか弱いかなどを表記し、本人にフィードバックします。 この評価の目安となるのが、高い業績を上げている社員の評価であり、それとの比較で自分自身の強みと弱みが明確になり、その結果、自己改善のポイントが明らかになります。このように、結果を本人にフィードバックすることで、問題点に気付かせ、改善計画を立案することが重要です。

 

②組織診断としての活用

 個人スキルの測定結果を組織別・職種別に集計することで、組織全体の強みと弱みが見えてきます。これにより組織そのものの問題点を把握することができ、具体的な改善点が明確になるのです。個人スキル測定が個々の社員に気づきを与える手段なのに対し、組織診断は経営者に気付きを与える手段といえます。

 

③行動基準としての活用

 行動基準作りでは、まず8群75項目のコンピテンシーの中から職種ごとに、とくに必要なコンピテンシーをできるだけ多くの社員を参加させ、選択します。続いて、選択されたコンピテンシーをさらに具体的な行動基準に落とし込んでいきます。

 多くの社員自身の手により選択・作成されたコンピテンシーと行動基準はすべて公開し、行動指針として明確にすることで全社的に行動の質を上げていきます。

 さらに、作成した行動基準を使って360度アンケート(上司、同僚、部下、後輩等からの多面評価)を実施します。360度アンケートを行うと、周囲の評価はおおむね本人にとっては厳しい結果となりますが、これは行動変革を促す非常に有効な手段となります。

 

④評価基準としての活用

 評価基準としては、8群75項目のコンピテンシーのなかから、経営者と幹部社員がその会社でとくに求められているものを決定します。次に各部署ごとに優秀な社員を集め、決定されたコンピテンシーの評価基準を作成します。この過程で経営者と幹部社員・優秀社員の間で会社が必要とするコンピテンシーとその評価基準のすり合わせが行われることにより、評価基準に対する社内の意思統一を図ることができます。そして、評価基準の作成に参加した社員は、新しい評価制度を社内に定着させるための推進メンバーとなります。

 

⑤採用テストとしての活用

 採用テストでは、8群75項目のコンピテンシーのなかから、新卒・中途採用対象者向けに必要な項目を選択し、採用テストを作成することができます。項目選択の過程で経営者と幹部社員は、その会社で採用したい人材に必要なコンピテンシーを明確に定義することができます。

 

⑥中長期教育・採用計画としての活用

 将来のあるべき社員像をコンピテンシーによって描き、同時に現状の社員をコンピテンシーによって棚卸します。あるべき姿と現状のギャップを教育によって埋めるか、採用によって埋めるかを検討し、計画を立案します。コンピテンシーは客観的な物差しとなるため、教育・採用の目標設定や効果測定を具体的にすることができます。

 

今回は紙面の関係上、もっとも教育的効果が高く、かつ手軽に即取り組める『③行動基準としての活用』について、具体的に解説をしていきます。