賃金のすべて又は一部が歩合給である場合、時間外労働の割増賃金を含め計算し支給しなければなりません。
その金額が最低賃金を下回ることは労働基準法、最低賃金法違反となります。
1 労働時間算定義務
使用者は、 1日8時間、週40時間の法定労働時間を遵守することを義務づけられ(労基32)、これを超えて労働させる場合は時間外労働協定を締結し(同36)、かつ法定の割増賃金を支払わなければなりません(同37)。
そのため、使用者は労働者の実労働時間を算定しなければならないこととなり、これを使用者の労働時間算定義務といいます。
労働基準法108条は、使用者に賃金台帳の作成義務を課していますが、その記載内容には労働日数、労働時間数ならびに時間外労働休日労働および深夜労働の時間数等がありますので(労基則54)、使用者は各労働者の実労働時間を正確に把握し記録しなければなりません。
2 時間外労働と割増賃金
使用者には前記のとおり労働時間算定義務が課せられていますから、原貝Jとしては時間外労働時間に法定ないしそれ以上の一定の割増率を掛け合わせて算出される金額を時間外労働手当とすべきです。
しかしながら、法は一定額以上の割増賃金を支払うことを使用者に義務づけるにとどまり、その算出につき法所定の計算方法を用いることまで要求していないと解します。
そこで、実際の支払額が法所定の計算方法による割増賃金以上となる場合は違法ではないとされています(昭24・1・28基収3947)
3 時間外労働手当を歩合給として支払うことの可否
各種手当等の支給によって労働基準法37条所定の割増賃金が支払われたというためには、月例給与のうち割増賃金相当部分とそれ以外の部分とが明確に峻別できなければなりません(大阪地半1平9。12・24、大阪地判平1507・4ほか)。
もし、仮に峻別できないとすると、労働者から未払いの時間外労働手当の請求ができないこととなり、労働基準法37条の趣旨が潜脱されるからです。
ところが、全歩合給の場合はそもそもどの歩合給部分が割増賃金相当部分か峻別困難であり、よって何がしかの割増賃金が支払われているとしても、それが法所定の割増賃金以上に達しているか否か判定できません。
このことは固定給と歩合給とで構成されている場合もそれらのどこが割増賃金相当部分かが判別できないのであれば同様です。
したがって、単に歩合給であることをもって割増賃金が支払われていたとすることはできません。
歩合給は道路貨物運送の運転手やタクシー会社の乗務員、販売会社の営業社員に多いのですが、以上を留意し、労働時間管理と割増の計算法と審査し、就業規則、賃金規定、雇用契約書、社員との同意書等整備しなければなりません。