秘密保持義務とは、労働者が使用者の営業上の秘密を保持すべき義務のことであり、労働者は、労働契約の付随的義務(誠実義務)として、秘密保持義務を負っているとされています。
そして、実際上、多くの企業の就業規則では、労働者の秘密保持義務が明定されています。
2 不正競争防止法による営業秘密の保護 ところで、営業秘密は不正競争防止法によっても保護されますが、同法では保護の対象となる営業秘密の要件を次のとおり定めており(同法2Ⅳ )、これは労働契約上の秘密保持義務を検討するにあたっても参考になります。
① 秘密管理性 これはその情報について、外部から認識可能な程度に客観的に秘密の管理状態が維持されていることをいいます。秘密管理性があったか否かの判断にあたっては、部外秘と記載されているなどアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにされていたか、アクセスできる者が制限されていたか、アクセスした者が権限なく使用・開示できないような措置が講じられていたかなどの点が考慮されることになります。
② 情報の有用性 これは事業者が営業活動を行ううえで役に立つ情報という意味であり、保護される秘密の対象を、一定の社会的意義と必要性が認められるものに限定するための要件とされています。
③ 非公知性 これは、当該情報が保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態にあることをいいます。
〇 秘密保持義務違反の効果 労働者に秘密保持義務違反があつた場合、懲戒処分や解雇の対象となり得ます。また、損害賠償請求や、場合によっては差止請求も可能です。さらに、不正競争防止法の要件を充たすときは同法の定める差止請求等の各種救済を受けることもできます。
〇対策
営業秘密は企業の重要な財産でありその漏洩等を防止する必要があることはいうまでもありません。日常の秘密管理としては、当該情報について、法的保護を受け得るように、外部から認識可能な程度に客観的に秘密として管理しておくことが必要です。
それととも に、従業員との関係では、就業規則等に秘密保持条項を設けることはもちろん、特に秘密情報に接する立場にある従業員については、具体的に秘密保持義務の内容を定めて個別に合意しておくことも検討すべきでしょう。
また、営業秘密の漏洩が問題となるのは、多く の場合、在職中の従業員ではなく、退職した従業員ですので、在職中に重要な営業秘密を扱っていた従業員については、退職後も秘密保持義務を負う旨の特約をしておくことも有用です。
小野事務所では就業規則作成、変更依頼の場合は秘密保持のため、就業規則に秘密保持条項と委任規定として業務情報安全管理規定 個人情報管理規定 特別個人情報・雇用管理情報管理規定(マイナンバー関係)を作成し、雇用契約時、退職時は秘密保持の誓約書に署名するようアドバイスしています。